スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営
せっかくものをつくるなら、今までにない製品を作ったほうがいい。他社のマネをした製品はすぐに陳腐化し、たどりつく先は価格競争しかない。スノーピークは顧客目線のオリジナルな製品にこだわり、「好きなことだけを仕事にする」経営を貫いている、強いブランド力を持つ会社だ。
題名 スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営
著者 山井太/日経トップリーダー編
発行 日経BP社
内容
山井太さんは、1959年新潟県生まれ。明治大学卒業後、外資系商社勤務を経て、86年に家業を継ぐ。96年に社長に就任し、社名を株式会社スノーピークに変更。98年にはSUVに乗り、移動して行うキャンプスタイル「オートキャンプ」を世界で初めて提唱する。
この新しいキャンプの楽しみ方に合う製品やサービスを「どこにもない」「世界で初めて」に徹底的にこだわりながら開発。ハイスペックであるがゆえに高価格であるが「スノーピーカー」と呼ばれる熱心なファンを獲得しています。
山井さん自身も仕事としてだけでなく、年間30~60泊をキャンプで過ごす熱心なアウトドア愛好者でもあります。
入社当時は年商5億円、売上総利益1.3億円ほどの、どこにでもあるような小さな会社でした。その会社を独自の経営理念を掲げ、その実現に向けて製品開発、ものづくり、販売方法を磨いてきた結果、現在では年商45億円、売上総利益は17倍の23億円に成長しています。
マネジメントの観点から自社のことを一言で表現すると、「好きなことだけを仕事にする」経営だと言います。「自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できるモノやサービスを提供」というミッション・ステートメントに従って、世の中にない製品を次々と世に送り出してきました。そして、モノの価値が理解できて高くても買ってくれる人に向けてビジネスを展開し、「スノーピーカー」と呼ばれる熱狂的なファンを生み出しています。
著者にとって初めての著書となる本書は、スノーピークが考えてきたこと、取り組んできたことを公にし、さまざまな会社や役職の人に、「顧客に支持されるブランド経営」を考えるきっかけにしてほしいとの思いで書かれています。
こんな方におススメ!
☆ブランド価値を高めたいと考えている方
☆高くても売れる商品づくりを目指している方
☆圧倒的に差別化した商品を生み出したいと考えている方
感想
題名に「好きなことだけ!」を仕事にする経営とありますので、社長のやりたいことを自由きままに行っている会社だと感じてしまいますが、当然それだけではここまで顧客の支持を集められるわけはありません。
たしかに、ユーザー目線に徹して、「ほしいモノ」だけを作ることを前提としていますが、経営の三要素といわれる、「ヒト、モノ、カネ」を有効活用することを常に考えて行動している様子が紙面を通して強く感じられました。
アルバイトや契約社員にまかせず、社員が店長として張りついている「スノーピークストア」。壊れない、使いやすいなど、納得できる品質のものだけを製品化し永久保証をうたうスノーピーク製品。売上高45億円に対し、売上総利益23億円と売上総利益率50%をほこるアウトドアメーカーとしては、驚異の数字。
さらには、顧客とスノーピーク社員が一緒にキャンプを楽しむイベント「スノーピークウェイ」や、1年間の購入金額に応じてランクが上がるポイントカードの発行など、値熱心なファンを育てる仕掛けも用意されています。
著者は、経営とは何かと問われたときに
常識の集積と創造
だと答えています。常識あるいは原理原則を見抜く力を常に高める努力をし、定型化したセオリーを学ぶことは経営者としての基本であり、ドラッカーをはじめとする定評のある経営書はくり返し読むようにしていると言います。
ドラッカーと言えば、「企業の目的は顧客の創造である」という有名な言葉がありますが、実際の経営の現場でその言葉を実践し、みごとに体現されています。
会社の目指す方向をしっかり見定め、ブレない経営をしているスノーピークはこれからさらに飛躍する会社ではないでしょうか。
目次
Chapter1 熱狂的なファンが支える
Chapter2 クリエーティブとものづくりの魂 Chapter3 販売は科学 仕組みをつくる Chapter4 仕事後にキャンプ!のワークスタイル Chapter5 星空の下で五感を研ぎ澄ます Chapter6 白い頂へのヒストリー |
【今日紹介した本】
スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営
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