上司の常識は、部下にとって非常識
日常交わされるような会話例とその背景にある心理メカニズムを示し、時代的な背景を含めて上司と今どきの部下のギャップを解き明かしていきます。
題名 上司の常識は、部下にとって非常識~イライラと気苦労がなくなる部下育成の技術~
著者 榎本博明(えのもと・ひろあき)
発行 株式会社クロスメディア・パブリッシング
内容
著者の榎本博明氏は心理学博士であり、MP人間科学研究所代表を務めています。「自己物語」という独自の心理学的視点を通じて現代人の生き方を探り、よりよい生き方の提案を様々な活動を通じて行っています。
近頃の若い者の考えていることはさっぱり分からない。この言葉はいつの世でも言われてきた言葉で、エジプトの遺跡にも「最近の若者は・・・」という趣旨の言葉が書き記されているという話を聞いたことがあります。
ですが、社会の仕組みや教育方法、あるいはライフスタイルに急激な変化が起こっている今日では、世代間のギャップはいまだかつてないほど広がっています。
今どきの部下の扱い方が分からないと感じるのは、その行動の背景にある心理メカニズムが分からないからだと著者は言います。
本書では、上司が理解に苦しむ部下の心が読めるようにするために、職場でありがちな上司と部下の具体的な会話を題材にして部下の心理メカニズムを解き明かし、どう対処すべきか示してくれています。
また、人格形成に大きな影響をあたえているであろう時代背景を知ることにより、適切な対処法や部下対応力が高まり、部下の信頼を得るために自らの態度や行動のどこを改善すれば良いかも分かるようになってくるでしょう。
上司が部下をどう見ているか、だけでなく部下が上司をどのように見ているかという視点でも書かれているので、理解できないと嘆くだけでなく直すべきところは改善しお互いが歩み寄ることでよりよい職場環境になり、部署全体のモチベーションも高まるはずだとしています。
こんな方におススメ!
・部下の言動に日々頭を悩ませている方
・理解できない部下の行動をなんとか分かりたいと思う上司の方
・今の若者の育ってきた時代背景を知りたい方
感想
「ゆとり世代」と言われている今の20歳代前半の若者の行動原理を読み解くには、彼ら(彼女ら)がどのように学校や地域で教育されてきたのかを知ることが一番の近道だと教えてくれていました。
例えば、「言い訳が多い」と感じる若者に対するイメージも、今の年配者が言い訳を許さない文化で育った世代であるのに対して、若者は言い訳が通じる文化で育ったせいなのだそうです。
かつての学校では悪いことをしたら有無を言わさず叱られたのですが、今の教育現場では叱る前に「まず事情を聞いてみよう」というやり方で言い訳にも耳を貸してくれるので、言い訳をするのはよくないという意識が薄くなっていると言います。
自己主張することを推奨する教育を受けてきているので、謙虚を善とする世代からすれば、周囲への配慮をしないでストレートにものを言いすぎるといった不満を持ちます。
一方、若者は上司がタテマエでものを言うからホンネが見えず何を考えているか分からないと不満に思います。
海外に出て行ってグローバルに仕事をするような人であれば自己主張をしていかなければ負けてしまうこともあるでしょうが、国内で仕事をする分にはある程度の気くばりは必要だと思います。
日本の社会を支えている年配者は相手に対する思いやりや自分の利己的な気持ちを抑えるためにタテマエを使ってきました。
そんなタテマエを重視(あるいは無意識に)している世代がまだまだ多くいるビジネスの世界をホンネだけで渡っていくのは現実として厳しいと言わざるをえません。
上司はそうしたタテマエの効用についてきちんと説明する。若者は言いたいことをすぐに口にしないで状況を考えながら言葉に出すなど、賢く生きていく術を身につけていくべきでしょう。
人間は育った時代の価値観に大きく影響を受けて育ちます。社会に出ると様々な世代の人がいるので、お互いの価値観の違いを理解しておかないと無用ないらだちを覚え、関係も難しくなってしまいます。
どちらが正しいということではなく、お互いに相手の価値観を認めることが必要なのでしょう。
目次
第1章 何が原因なのか? 仕事より人間関係に疲弊する職場
第2章 どう指導したらよいのか? 理解できない若者に苦悩する上司たち 第3章 上司としてどうあるべきか? 尊敬できない上司に絶望する部下たち 第4章 その壁を乗り越えるには? なぜ上司と部下はわかりあえないのか? |
【今日紹介した本】
上司の常識は、部下にとって非常識~イライラと気苦労がなくなる部下育成の技術~
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