メイドインジャパンをぼくらが世界へ
衰退産業と言われるアパレルと日本酒業界で、異例の躍進を続ける二人の若手経営者が、日日本のモノづくり「メイドインジャパン」をテーマに熱く語ります。
題名 メイドインジャパンをぼくらが世界へ
著者 山本典正+山田敏夫(やまもと・のりまさ+やまだ・としお)
発行 株式会社dZERO
内容
著者の山本典正さんは、1978年和歌山県生まれ。京都大学経済学部卒業後ベンチャー企業勤務を経て家業の酒造会社へ入る。特色ある日本酒の開発・販売を行い、全国若手蔵元のリーダーの一人となっている。代表銘柄は日本酒「紀土」と梅酒「鶴梅」。
もう一人の著者である山田敏夫さんは、1982年熊本県生まれ。中央大学在学中に留学し、パリのグッチに勤める。大学卒業後は、ITベンチャー企業、ファッション関連会社を経て、2012年に独立しライフスタイルアクセントを設立。工場と消費者をダイレクトにつなぐファクトリーブランド専門の通販サイト「ファクトリエ」は日本初。
本書は、衰退産業と言われて久しい、日本酒とアパレル業界を舞台にして右肩上がりの成長を続けている若手経営者の二人が、日本のモノづくりについて熱く語っています。
最初は、これまでの事業の経緯や二人が育ってきた時代背景や環境などについて会話が進んでいきます。中盤以降は会話に熱が入り、目標とするビジネスモデルや会社像について語り合います。終盤では、日本のモノづくりの将来や地方再生など、現在から未来につなげる熱い議論に発展していきます。
こんな方におススメ!
☆モノづくりを生業としている方
☆衰退産業と言われる業界で働いている方
☆日本の魅力を世界に発信していきたい方
感想
「熱い!」。読後の印象はこの言葉です。こだわりの経営方針から生まれるこだわりの製品。これをこだわりの分かる人に買ってもらう。若き経営者の熱い思いがこだわりとなり、出来上がる製品に反映され、モノだけでなく熱い気持ちもお客様は一緒に買っているのだと思いました。
本書は対談ですので、お二人の会話のやりとりでページは進んでいくのですが、お互いの価値観がよほど似ているのか、語り手が変わってもまったく違和感なく読み進めてしまいます。
お二人のビジネスに対する共通点はまず正直であることです。小手先に走らずお客様や従業員ともしっかり向き合い、腹の底から本質的に正しいと思える仕事をされています。
次が将来をしっかり見すえているところです。100年企業を目指し、まずは続けていくこと。その中で製造や販売の仕組みをつくり上げ、独自のブランドとして次の世代につないでいくことを目標とされています。
さらには、地方を強く意識しているところです。大型スーパーの大量閉鎖や百貨店の不振など、市場が小さくなっていく中で大量消費時代の「全取りモデル」に限界がきているとの認識のもと、地方の良いものを都会や海外へ発信し、お金やそれに魅せられた人々が地方へ還流するというビジネスモデルを目指されています。
また、本書の中でも何回も取り上げられ二人が声をそろえて語っているのは、「東京オリンピックの後が怖い」ということです。オリンピックまでの5年間はジャパンブームで日本のモノが注目されるが、その後は違うブームがきて、すぐに忘れ去られてしまう可能性が大いにあります。ですから、この5年間でしっかりやるべきことを愚直に進める意義を説いています。
売上だけではない業界のシンボリックなリーダーとして、活躍されているお二人の心意気が紙面から伝わってきて心揺さぶられる一冊です。
目次
第一章 「日本初の世界ブランド」宣言
第二章 不況と凋落の中で育った世代 第三章 百年後を見据えたロングビジョン 第四章 「三方よし」ビジネスモデル 第五章 メイドインジャパンの復権を目指して |
【今日おススメした本】
メイドインジャパンをぼくらが世界へ
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