V字回復の経営 2年で会社を変えられますか
「2年で黒字化できなければ、退任します」。不振事業再建にのり出した黒岩莞太は、業績を回復させることができるのか。実際に行われた事業改革を題材に、臨場感あふれるストーリーで描かれたベストセラーです。
題名 V字回復の経営―2年で会社を変えられますか
著者 三枝匡(さえぐさ・ただし)
発行 日本経済新聞出版社
内容
著者の三枝匡さんは、一橋大学経済学部卒業後、三井石油化学を経てボストン・コンサルティング・グループ勤務。MBA取得後は、赤字会社再建など実際の経営にたずさわり、1986年に株式会社三枝匡事務所を設立。不振会社の再建支援を行う他、社外取締役などをつとめる。2002年から株式会社スミスグループ本社代表取締役CEOに就任し、2012年までに売上高2倍以上、営業利益3倍以上に成長させる。
上場会社の太陽産業のアスター事業部は、市場の縮小や競合他社にシェアをうばわれ続けた結果、赤字体質になっていた。合理化の努力も競合企業の後追いにすぎず、このままいけばどこまで沈んでいくのか分からない状況であった。
社長の香川五郎は、子会社の社長である黒岩莞太にアスター事業部の改革をたくす。「2年で黒字化できなければ、退任します」と不退転の覚悟で難題に臨む、黒岩による再建は成功するのか。
改革タスクフォースの結成、作業の進捗スピード、組織のタイミング、その後の急激な業績回復に至るV字回復の2年間は、著者がかかわった日本企業5社で実際に行われた事業改革を題材にしています。
こんな方におススメ!
☆不採算部門を立て直したいと考えている方
☆社内改革に取り組みたいと考えている方
☆業績回復のための有力な手段を探している方
感想
本書は、赤字続きの事業部を改革し、業績をV字回復させるという成功物語として描かれています。確固たる信念と強力なリーダーシップをもった主人公が、次々と変革を進めていきますが、理想的な組織をつくり上げるというプラスの部分だけでなく、それにともなったマイナスの部分も同時に書かれています。
人は、何も変えずに今まで通りの行動を続けているのが一番楽なのであり、その行動を改め新しいものを取り入れるということに少なからず抵抗を示すものです。
物語では、2年で改革を成し遂げていますので、社員は短期間で急激な環境の変化にさらされたことになります。
この手のビジネス書では、指導者の目線で話が進んでいくことが多いのですが、本書では変革が行われた場面において、社員がどのように感じ、考えていたかを社員にインタビューするという形式でもつづられています。
主人公が同じ言葉を発したとしても、受けての年齢、職歴、職務、人間性などにより受けとり方はさまざまです。また最初はネガティブな受けとり方であった人が、徐々に変革に対しプラスの方向へ意識が変化していく、心の移り変わりがていねいにしっかりと描かれています。
著者は、成功するためには成功要因と裏腹な関係にある失敗要因にも気を配ることが重要と言います。本書を読み進めるうちに、潜在的な「失敗の落とし穴」が現れます。それがいったい何なのか、そこに注目するのも興味ある読み方になるでしょう。
目次
プロローグ
第1章 見せかけの再建 第2章 組織の中で何が起きているか 第3章 改革の糸口となるコンセプトを探す 第4章 組織全体を貫くストーリーをどう組み立てるか 第5章 愚直かつ執拗に実行する エピローグ |
【今日紹介した本】
V字回復の経営―2年で会社を変えられますか
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