加賀屋さんに教わった おもてなし脳
加賀屋さんはなぜこれほど人気があるのでしょう。
外国から訪れる人の心をも動かすその理由は、西洋的な「サービス」とは、ひと味もふた味も違う日本流の「おもてなし」の精神にあります。
題名 加賀屋さんに教わった おもてなし脳
著者 茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
発行 株式会社PHP研究所
内容
著者の茂木健一郎氏は、脳科学者としてテレビなど多く出演され、著書も「創造する脳」「考える脳」など多数出されています。
日本は中国や台湾といった新興国の勢いに脅かされ、今や、製造業を中心とした「モノづくり」だけでは、日本人の豊かな生活を支えられないことは常識となりつつあるようです。
日本の潜在能力はこんなものじゃない。多くの日本人はそう信じています。では、どのような力でこのグローバル化した時代、世界に対してどうやって戦っていけば良いのでしょうか。
その答えの一つとして著者は「おもてなし」の心をあげています。
日本の「おもてなし」の心は、西洋の「サービス」とは中身がかなり違っていると言います。
「サービス」はお客様が主で、サービスを提供する側が従。お客様が何か望んだことをその通りに実行することが基本となります。
一方「おもてなし」は、主人がお客様の気持ちをくみ、その望んでいるところを読み取り「サプライズ」という形ですばらしい体験を提供します。
主人はお客様の従ではなく、むしろ場を演出するという意味では主役なのです。
このような日本の文化の深いところに根差している「おもてなし」を実践している、石川県七尾市和倉温泉にある「加賀屋」は、旅行新聞社による「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」において総合1位を34年連続で受賞しています。
本書は日本を代表する「おもてなし」をされている「加賀屋」を舞台に「おもてなし」の秘密を通して、日本の可能性について考えていきます。
こんな方におススメ!
・日本を代表する「加賀屋」のおもてなしを知りたい方
・外国人にも通用する「おもてなし」の秘密を知りたい方
・一流の「おもてなし」を知り、自社に取り入れたい方
感想
加賀屋で働く従業員の方とディズニーリゾートで働くキャストの方のお客様(ゲスト)に対応するときの気持ちに共通のものを感じました。
両者ともに、お客様(ゲスト)の立場になって、いかにこの空間・時間を楽しんでもらうかを考え、こちらが考えている対応の一歩先の行動をすることで感動のサプライズを心の中に残す。
その行動も金銭や出世などをまったく考えずに純粋にその人の為に行われている点で、他の追随をゆるさない集客数、リピート率につながっているのではないのでしょうか。
では、この接客術をいかにして従業員に教えているのか本書はその秘密を探っていきます。
著者は加賀屋のサービスの本質を「『正確性―当たり前のことを当たり前に』と『ホスピタリティー―お客様の立場にたって』思いやる心」と考えます。
正確性については言うまでもなく、ある程度の反復訓練で身につけられるものですが、ホスピタリティーの部分はどのようにして教えているのでしょうか。
女将の小田真弓さんの話しによると、よく気が付く人とそうでない人、いろいろいるようですが、あまり気が付かない人には具体的に「今日は自分の家に、大切な人が来ると想像してみなさい」と教えることがあるそうです。
大切な人には「あの人はこれが好きだし、こんなこともしてあげて喜んでもらおう」と考える。それをそのままお客様に当てはめるということなのです。
「ああよかった。うれしかったわ。加賀屋に来てよかった。」とお客様の喜ぶ顔を見ることが本当に幸せだという体験を繰り返すことで「気づき」のエキスパートに育っていくそうです。
これを脳科学的に言うと「人のために何かすると、自分が喜びを感じる」ようになり、報酬系と呼ばれる回路が活動し、ドーパミンが盛んに分泌され、さらに楽しくなり、やる気が出る作用があるそうです。
とはいえ、接客スキルの教育と高い水準の要求だけでは従業員も幸せを感じることはできず「おもてなし」どころではなくなってしまいます。
加賀屋では心の余裕がないと「気づき」も生まれにくいと考え、従業意を支援する二つの柱にもしっかり投資を行っています。
一つが客室の近くまで料理を運ぶハイテクの自動運搬システムの導入。もう一つが企業内保育園の併設です。
日々の仕事にも、将来的に対しても安心があってこそ、人間らしい気持ちを保てる。「おもてなし」の前提として「働く人が幸せでないと、お客様を幸せにできない」ということがあるのではないでしょうか。
目次
第1章 「おもてなし」という日本の強みさりげなくも最高の気配り・心遣いを加賀屋で体験 第2章 加賀屋では「おもてなし」をどう教えているか「気づき」を生む余裕をどうやってつくっているのか 第3章 「おもてなし」の心は育てられるのか形から入って本質を追及することの意味 第4章 世界に通じる「おもてなし」のために「おもてなし国際化時代」の脳の使い方
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【今日紹介した本】
加賀屋さんに教わった おもてなし脳
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